Lifestyle
【芳麗・女と文化の話】結婚、仕事、子育てetc.菅野美穂が語る〝女性が生きること〟とは?
今月のゲスト:菅野美穂さん
10代で女優デビュー以降、最前線で輝かしいキャリアを重ねてきた菅野美穂さん。出演ドラマ『働きマン』『結婚しない』などでは、女性の葛藤や悩みをリアルに演じて、多くの女性視聴者の共感を呼んできました。一方、私生活では世界中を旅したり、ファッションを楽しんだりしながらも、「私もアラサーの頃は、この先の人生にも悩んでいました」とも。繊細にしてパワフルな20代、30代を経た菅野さんが、今思う〝女性が生きること〟とは?
毎日、自分の怒りに 自分で疲れてます(笑)
芳麗 菅野さんとは20代の頃から、濃厚なお仕事や楽しい時間もご一緒させていただいて。人間としてもとにかく大好きで尊敬しています!
菅野 ありがとうございます!たくさん思い出ありますよね。私が30歳のときは、雑誌の企画で屋久島を旅したり。芳麗さんは、撮影後に絶景の横河渓谷に洋服のまま飛び込んで泳いでいたのが忘れられない(笑)。
芳麗 最高でしたねぇ(笑)。でも、忘れないでください。撮影後に最初に飛び込んだのは菅野さんだから! みんながウズウズしているのを見て先陣を切った。あの思い切りの良さがカッコ良過ぎて、怖がりな私も続けたんです(笑)。
菅野 あはは!懐かしいですね。
芳麗 今はコロナという大変な事態ですけど、近況はいかがですか?
菅野 ずっと子どもと一緒にいて、ずっと怒っています(笑)。今年、5歳と2歳になるんですけど、息子がやんちゃ盛りなんですよね。自分の怒りっぷりに自分で疲れきってます。
芳麗 いつも、ピースな菅野さんが?
菅野 そんな私になっちゃいました(笑)。育児をするほどに、自分の未熟さを思い知ってますね。10代の頃から仕事して、厳しい現場も経験して。私ってわりと忍耐力があるほうかなと思っていましたけど、育児はもう別次元の大変さ! 家族になだめられつつ(笑)、日々、子どもに向きあっています。
芳麗 ふふふ。でも、子育てに対して超真剣で全力だからこそ、それほどの怒りも湧いてくるんでしょうね。
菅野 うーん。たしかに、最近、趣味とか全然必要ないんですよね。結婚前はあんなに旅やファッションに夢中だったのに、今はさほどでもなくて。結局、子育てを全身全霊で味わっているんだと思います。とはいえ、「ああ、幸せ!」なんて甘い感覚はなく、1日中、イライラしてますけど(笑)。
アラサーの頃は充実しつつも カスカスの雑巾でした(笑)
芳麗 andGIRL読者と同じアラサーの頃の菅野さんは、悩みってありました?
菅野 30歳直前は不安でしたね。30代は大人のイメージなのに、全然、追いつけていない気がして・・・。でも、実際に30歳になってみたらすごく楽しかったんです。図太くなって開き直れたんだと思う。仕事で人と接するときもオープンに、冗談とか言えるようになったりしてね。
芳麗 菅野さんは、いつも現場の楽しいムード作りが上手ですよね。撮影の合間は、爆笑レベルで笑ってばかりいた気がします(笑)。
菅野 30歳超えてから、そういうのも仕事の1つだなと。演技だけじゃなく、現場のコミュニケーションや番宣も含めて、私の仕事だなと気づきました。ただ、40代の今はさらに図太くなったので、フランクになり過ぎないようにしないとなと。年下の子に冗談とか言い過ぎないよう気をつけてます。もはや、パワハラになっちゃうかもしれないから(笑)。
芳麗 あはは!ベテランの重み!
菅野 そうそう。でも、30代って責任が増しつつも、あらゆる面で「こうあるべき」から自由になれる時期だから、色々とより深く楽しめるようになっていくと思います。
芳麗 そうですよね。
菅野 でも、みなさんが悩むようなことも悩みましたよ。いつ結婚して子どもを持つのかなとかね。結果としては、35歳で結婚しましたけど。30代前半は、お仕事に恵まれていることに感謝しつつも、一方、切れ目のない忙しさに疲れていて。心身ともに絞りきられて、自分がカスカスの雑巾になった感覚でした(笑)。
芳麗 ああ。アラサー時期って、そう感じている人が多いかもしれません。仕事もスキルアップして、周囲にも求められて、乗ってくる時期だし。
菅野 求められて仕事できたら楽しいですしね。忙しくても、公私のバランスを取れたら良いんですけどね。
芳麗 菅野さんはどうやってバランスを取ってましたか?
菅野 私の場合、お休みは世界中を旅しまくっていましたけど。
芳麗 そう!菅野さんといえば、世界41カ国旅してきたという伝説があります(笑)。
菅野 旅って、日常や忙しさで狭まった視野を広げてくれたり、固定観念を破ってくれるから、すごくいいんですけどね。でも、今は状況的に、それも勧められないですよね。
芳麗 そうですね。
菅野 私、思うんです。こうやって世の中がコロナで大きく変化する中、今の30代は新しい生き方を切り拓いていく世代なんだろうなと。だからね、たとえば、仕事も結婚も上の世代に倣うより、新たな方法を追求したほうがいいんじゃないかなって。
芳麗 なるほど。
菅野 今後は、働き方ももっと選べるようになるだろうし、結婚の形なんかもさらに変わっていくのかなって。
芳麗 たしかにそうですね。今後はリモートで仕事がスタンダードになりそうな会社や業種も多そうだなと。結婚もね、近年は法律婚のみならず、事実婚も現実的に増えています。
菅野 やっぱりそうなんだ。だから、これまでとか先人のやり方に囚われて「こうしなきゃ」って思い過ぎず、自分はどうしたいかを考えるいいと思います。
芳麗 ホントですね。すごく思います。
人生は1つの夢を叶えて 終わるわけじゃないから
芳麗 一方、社会は大きく変化しても、普遍的なアラサーの悩みは消えないですよね。特に女性の場合はそう。出産には期限があるし、恋愛と結婚とかキャリアについても揺れる時期だなと。
菅野 私も経験済みだからわかります。焦りますよね!でも、振り返ってみると、自分にとって真に大事なことであれば、ベストなタイミングで叶う気もするんですよね。私だけでなく、周囲を見ていても思います。
芳麗 それはたしかに。
菅野 それから、人生って何か1つを叶えて終わりじゃないんだなぁって。私の場合、35歳で結婚できたけど、次はやっぱり子どもを持ちたいと願い始めたし。幸運にも子どもを授かったら、今はもっと良い育児を目指して葛藤している(笑)。
芳麗 歳を重ねても悩みは尽きないし、何なら、より深まりますよね。仕事、子育て、今後は介護とかもあるだろうし。
菅野 そう。だから、〝生きる〟って面白いけど、悩み続けることなんですよね。「ああ、大変。どうしよう」と言いながら、日々、あっという間に過ぎていく。昔の私は、幸せになるって悩みがなくなることだと思っていたけど、そうじゃないんだなと。辛いことがなくなる人生は、私には待ってないことがわかりました(笑)。
芳麗 人生は悩みありき(笑)。
菅野 〝婚活〟とか〝仕事の飛躍〟とかアラサーの頃の悩みって、前を向いているからこそ。でもね、あの揺れる時期を過ぎて気づいたのは、「結婚する・しない」「子どもを持つ・持たない」もどちらの人生も素晴らしいし、大変だということ。どちらかだけが美味しいなんてきっとないから。
芳麗 年齢を重ねるとヒシヒシと感じますよね。きれいごとではなくて、どの道で見る風景もきっと貴重で悲喜こもごもなんだろうな。
菅野 ホント、そう思います。