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【体験談】〝卵子凍結〟実際にやってみてどう?経験者山口真由さんが明かす卵子凍結前に知っておくべき知識
andGIRL読者の中にも興味を持っている人の多い「卵子凍結」。子どもを持てる可能性を広げるものではあるものの、卵子凍結すれば確実に妊娠できるわけではありません。人生の選択肢として卵子凍結を考えているなら、まずは卵子凍結について知ることが大切です。実際に卵子凍結を行った人に、卵子凍結をするうえで感じたこと、大変だったことなどをお伺いしました。
実際にやってみてどうですか?卵子凍結を行った人に体験談を聞いてみた
信州大学特任教授・法学博士 山口真由さん
Profile
東京大学を卒業後、財務省に入省。その後、弁護士として法律事務所に勤務し、2015年からハーバード・ロー・スクールに留学。東京大学大学院の博士課程を経て、信州大学社会基盤研究所特任教授に就任。日米の家族法の研究を専門とする。著書も多数出版。
出産HISTORY
【36歳】
・AMH検査を受けて卵巣年齢50歳という結果が出る
・医療機関が行う卵子凍結セミナーに参加し始める
・採卵をスタート
【37歳】
・途中で卵子の刺激方法を変えながら全部で5回の採卵を行う
【39歳】
・出産
卵巣年齢50歳と診断され、卵子凍結の選択肢しかありませんでした
以前から卵子凍結のことは知っていましたが、費用もかかるし、そもそも自分が卵子凍結を検討しなければいけない状況になるとは思っていませんでした。あるとき卵巣年齢を予測できるAMH検査の存在を知り、受けてみることに。すると、卵巣年齢50歳だと診断され、卵巣を刺激しすぎると閉経するといわれました。卵子凍結をしたほうがいいというより、今やらなければどうにもならないという印象を受け、驚いたのを覚えています。
その頃は卵子凍結を行っている医療機関は多くなく、3つの医療機関の説明会に参加し、その中から凍結保管費用が安いクリニックを選んで卵子凍結を行いました。採卵を受けたのは、36歳から始めて37歳までの間に計5回。当初は高刺激法といって注射を毎日打って卵子を育てる方法でしたが、私の場合それではあまり卵子がとれないということになり、内服薬の服用と注射を組み合わせる中刺激法に変更。中刺激の場合は薬で排卵を止めることができないため、仕事でスケジュールの都合がつかなくて採卵を見送った周期もありました。
卵子凍結は不妊治療と違い、仕事の合間にやれるものだと思っていましたが、実際はそう簡単ではありません。仕事で都合がつかないことを伝えると、医師からは「ちゃんと向き合っていない」と言われてしまうことも。病院で長時間待ってやっと診察室に呼ばれても、医師と話せる時間はほんのわずかだし、聞きたいことが質問できない雰囲気なこともありました。
卵子凍結は自費治療だし、決して安いものではありません。それなのに、自己決定ができない無力な存在として扱われているような気がして、とてもつらかったですね。自己肯定感がどんどん下がっていくような感覚もあって・・・。正直に言うと、私にとって卵子凍結はあまりいい経験ではありません。
卵子が凍結できたらすべてがバラ色というわけではありません
凍結をした卵子を使った妊娠率などのデータが公開されていないことに疑問を感じることもありました。また、卵子凍結は肉体的、精神的、経済的にも負担がかかることなのに、多くの人が保険として卵子を持っているだけで、実際に使われることが少ないことも問題だと思います。私もその後のことを考えずに始めてしまいましたが、卵子凍結するからには、その卵子を使って何歳までに出産するのか、何歳で廃棄するのかなど、その後の計画を立てて行ったほうがいい気がします。
卵子凍結と不妊治療、出産を経験した今、卵子凍結を検討している人に伝えたいのは、「卵子が凍結できたらバラ色」ではないということ。不妊治療でも、想像以上にお金がかかりますし、融解した卵子を使って体外受精をしても、受精しない場合もあるし、着床しないこともある。何度も失敗を繰り返すと精神的なダメージも大きい。
また、私は出産した年齢が高かったため、妊娠高血圧にもなりました。場合によっては予定日よりも早めに出産しなければいけない可能性もあり、赤ちゃんや母体に負担がかかることもあります。私が言いたいのは、卵子凍結をして出産年齢を先延ばしにするのはおすすめできないということ。芸能人が高齢で出産しているのを見て、「いつでも産める」と考えるのは違う気がします。
卵子凍結のいい面悪い面を理解してから選択してほしい
ただ、女性がキャリアを築くうえで日本の社会構造が合っていないのは事実。一番妊娠しやすい20代で出産したとしても、仕事と育児を両立できないようになっているからです。子どもが熱を出して保育園から呼び出しの電話があったとしても、裁量権のない20代だったらそう簡単に仕事を切り上げてお迎えには行けないですよね。私たち女性には人生のオプションが少なすぎる。
でも、社会が変わるのを待っていたら、時間がかかりすぎて出産できない年齢になってしまう。どうすればいいのってなったときに、卵子凍結は1つの選択肢にはなりえます。ただ、卵子凍結を選択するうえで、ポジティブな面だけでなく、ネガティブな面があることも理解してほしいです。
私は36歳になって自分のAMH値が低いことを知りましたが、学生時代にわかっていれば、自分のキャリアと家族計画をどう両立するかを考えることもできただろうし、他の対策もとれたかもしれません。AMH検査は数千円でできるものなので、もっと早くやっておけば・・・という後悔もあります。andGIRL読者には私よりも若い方もたくさんいらっしゃると思うので、私にはできなかったことをしてほしいと思っています。
構成・文/水浦裕美
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