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25歳で乳がんが発覚した元SKE48・矢方美紀│経験者が語る乳がんのリアルのメイン画像

アラサーになったら意識すべき「乳がん」のこと

教えてくれたのは・・・元SKE48 矢方美紀さん

7年半所属したSKE48ではチームSのリーダーに。25歳でステージ2Bの乳がんと診断され手術を受ける。現在はテレビやラジオへの出演、ナレーションなどに加え、声優としても活動中。

25歳で乳がんが発覚!元SKE48 矢方美紀さんに体験を聞きました

25歳で乳がんと診断され左乳房を全摘出

乳がんに気づいたきっかけは小林麻央さんの報道でした。当時はテレビ番組で乳がんに関する特集が組まれることが多く、番組内で紹介されていたやり方やYouTubeを参考にセルフチェックを行ったところ、左胸の表面にビー玉大のかたいものを発見したのです。「乳がんかもしれない」と疑った理由は、しこりが左右対称ではなかったこと。家族や親戚関係に乳がんになった人はいなかったので罹患リスクが高かったわけではありませんが、しこりに違和感を感じて仕事関係の人に相談すると、病院に行くことをすすめられ、乳腺外科を受診しました。

最初に受診した病院で検査を受けたところ乳がんの疑いがあるということで大きな病院を紹介されました。大病院で針を刺して組織の一部を採取して調べる生検やマンモグラフィ検査、超音波検査を受けたところ初期の乳だがんと診断され、手術をしなければいけないといわれました。

当時、私はまだ25歳。自分の人生プランの中でがんといった大きな病気をするのはもっと先のことだと思っていたから、こんなに若くてもがんになるんだと驚きました。これからの生活のこと、仕事のこと、将来的に結婚をして子どもを産むのか・・・。それらを一気に考えないといけなくなり、荷が増えたとも感じました。ネットで「乳がん」「若くしてなった」と検索すると、最初に出てくるのがあまりよくない死亡率。「私は長生きできないかもしれない」と想像することもありました。

また、乳がんになった人の情報を探しても、出てくるのは40代や50代の方が多く、キャリアを築いている途中の若い世代の方の乳がん症例が見つからなかったため、誰をモデルにして自分の治療法や人生プランを立てて歩んでいったらいいのかがわからず、悩みました。最終的には担当医と相談をしながら手術と治療のプランを立てていきました。最初は初期の乳がんだと診断されていましたが、MRI検査で全身を診てもらったところリンパ節への転移がわかりステージ2Bとなり、手術後の最終的な結果でステージ3Aと診断されました。

手術では左乳房を全摘出し、リンパ節を切除しました。手術後の治療は人によって異なりますが、私の場合は抗がん剤治療を半年、放射線治療を1〜2カ月行い、ホルモン療法は7年目に突入しています。乳がんは女性ホルモンとの関わりが大きい病気なので、実はつい最近まで約6年半ほど生理が止まっていました。これも、実際に乳がんになってみないとわからない事実だと思います。

がんで失ったものも多いけれど得られたものもある

乳がんの治療は体と心に負担があるだけでなく、金銭的な負担も大きいと思います。治療に関して値札がついているわけではないですし、手術の金額も明確な提示が病院からあるわけではありません。こちらから聞いて「保険が適用されてざっくり30万程度」と教えてもらえるだけです。それだけでなく、手術までの検査費用、入院費、薬代などもあり、高額療養費制度もありますが、がん治療にかかるお金は桁違い。

どれだけお金がかかるかわからず心配だったため、絶対に収入をゼロにすることはできないと思い、動ける範囲で仕事を続けながら治療することを選択。がん治療をすると髪の毛が抜けたりむくんだりして見た目が変わってしまうので、芸能のお仕事ができなくなる可能性を考え、事務の仕事を紹介してもらったり、以前から働いていたアパレルの仕事をしていました。

体調が悪いときは仕事をセーブしつつ、事務とアパレルの仕事、芸能活動を掛け持ちしながら乳がんの治療をすることを決意。

がん治療中に仕事をしなくても・・・と思う人もいるかもしれませんが、仕事が一切なかったら心が折れてしまっていたかもしれません。がん患者であっても仕事ができる環境があったことはとてもありがたく、働くことが心の支えになってもいました。乳がんはとてもデリケートな病気のため、自分が乳がんになって手術を受けたことを言いたくないという気持ちが当初はありましたが、これからも仕事を続けていくためには知ってもらう必要があると思い、「私はがんですけれど働きたいです」と、SNSで公表しました。発表したことで「乳がんについて初めて知った」とか、「私も乳がんです」と応援してくださる方もたくさんいたので、今となっては公表してよかったと思っています。

乳がんになっても生きていれば温泉にも行けるし恋愛だってできる

がんになってツラいこともたくさんありましたが、得たこともあります。一つは、人はいつか死んでしまうということが自分ごととして考えられるようになり、自分自身に求められていることをちゃんとやれるようにがんばろうと以前よりも強く思うようになれたこと。二つ目は、見た目ではなく、中身に好感を持ってくれたり評価をしてくれる人がいることに気づけたこと。

手術後は胸がなくなることに対するまわりからの見え方や、髪の毛を失って日々どう過ごすかを考えて落ち込むこともありましたが、見た目はウイッグなどで工夫することもできます。自分に似合うものを考えて生活することで、治療前には気づかなかった自分の中の新しい一面を見つけられましたし、前向きな自分にも出会えました。

それに、胸がなくなったとしても、普通に生活できています。胸がないと海や温泉に行けない、恋愛はどうするの?と考えることはいっぱいありますが、やろうと思えばなんだってできます。それを自分自身で実証できたことで前向きになれたし、強くなることができました。しかし、このような考えになるまでには数多くの葛藤がありました。少しでも多くの人が乳がんという病気で悩まないためにも、この記事をきっかけとして乳がんとはどんな病気なのかを知り、自分ごととして考えてくれるとうれしいです。

当時は色や長さの違うウイッグを10個ほど所有し、その日の気分や服装で使い分けて楽しんでいたそう。

文/水浦裕美 ※andGIRL2024年秋号より

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